SteelSeriesより2019年12月に満を持して発売された、ハイスペックゲーミングキーボード「APEX PRO TKL」を3か月ほど使用しましたのでレビューしていきたいと思います。
先に言うと、個人的にはかなり微妙なキーボードだと思っています。
高価なキーボードなので購入を迷っている方は参考にしていただければと思います。
製品スペック
キースイッチ | メカニカル (OmniPointメカニカルスイッチ) |
かな印刷 | 無 |
アクチュエーションポイント | 0.4mm~3.6mm |
押下圧 | 45cN |
スイッチ寿命/耐久 | 1億プレス |
サイズ/重量 | 幅355.44mm×奥行139.26mm×高さ40.44(H)mm/771.1g |
複数キー同時押し | フルキーロールオーバー |
USBハブ機能 | USBパススルーポート |
ディスプレイ | 有機ELスマートディスプレイ |
対応OS | WindowsおよびMac OS X |
キースイッチについて
このキーボードの最大の特徴とも言える、SteelSeries独自開発のOmniPointメカニカルスイッチについて見ていきたいと思います。
OmniPointメカニカルスイッチはアクチュエーションポイント(キーを押した時にPCが認識する距離)を、
最短0.4mm~最長3.6mmまで、ユーザーの好みによって変更することができます。
この最短0.4mmというアクチュエーションポイントの浅さが、ほかのゲーミングキーボードのキースイッチと比較して、いかに突出しているか比較したいと思います。
スイッチ名 | AP | スイッチ寿命 | 押下圧 |
OmniPointメカニカルスイッチ (SteelSeries) | 0.4mm~3.6mm | 1億プレス | 45g |
リニアオプティカルスイッチ (Razer) | 1.0mm | 1億プレス | 40g |
Cherry MX RED | 2.0 mm | 5,000万プレス | 45g |
Cherry MX Silver | 1.2mm | 5,000万プレス | 45g |
2018年くらいまではCherry MX Silver(銀軸)がアクチュエーションポイントの浅いキースイッチとして最も優秀かつスタンダードな存在だったと思いますが、
最近ではRazer独自開発のリニアオプティカルスイッチのように銀軸よりもアクチュエーションポイントの浅いキースイッチがどんどん出てくるようになってきました。
それでもSteelSeries(OmniPointメカニカルスイッチ)の0.4mm~3.6mmというアクチュエーションポイントの浅さは、異次元に浅く、かつ可変ということで、間違いなく現行のゲーミングキーボードで採用されているスイッチの中では最もハイスペックなキースイッチであるといえます。
また耐久性も1億プレスとなっており、銀軸・赤軸の2倍の寿命を誇る点も単純にすごいと思いました。(語彙力)
一つ注意点としては、このOmniPointメカニカルスイッチはAPEX PRO TKLのすべてのキーに採用されているわけではありません。

あくまで入力頻度の高いキーのみOmniPointメカニカルスイッチが採用されています。

APEX PRO TKLのコスパが悪いと思う理由
1.「反応点の浅さ」は明確なメリットとなるのか?
個人的にAPEX PROのコスパが悪いと判断する理由の一つは、既存のキースイッチと比較して「0.4mmという反応点の浅さは明確なメリットといえるのか?」と懐疑的であるから、です。
もちろん、機械的なスペックとしては反応点が浅いほうが、FPSやMOBAなどのゲームをプレイする上で、より高速な信号を送ることができるため優れているといえます。
ただ、私がPUBGを実際にこのキーボードを使用してプレイしている中では、この反応点の浅さによる恩恵を体感することができませんでした。
FPSをプレイするうえで、反応点の浅さが重要となり得そうなシーンを想定してみると
「ストッピング」が例に上がると思います。
ここでは深く解説はしませんが、「ストッピング」とは一部のFPSゲームでは当たり前の技術とされており、銃を撃つ際にキャラクターの進行方向とは逆の方向にキー入力を行うことで、キャラを静止させ、より正確な射撃を行う技術です。
そこでより正確かつ高速なストッピングを求められる「CSGO」海外プロ(375名)の使用キーボードを確認してみました。(https://prosettings.net/)
順位 | キーボード名 | 人数 |
1 | HyperX Alloy FPS | 50 |
2 | Xtrfy K2-RGB | 27 |
3 | HyperX Alloy FPS Pro | 19 |
4 | Logitech G Pro Mechanical Keyboard | 15 |
5 | Razer BlackWidow X Chroma ME | 15 |
6 | Logitech G513 | 12 |
7 | HyperX Alloy Elite | 11 |
8 | Logitech G Pro X Mechanical Keyboard | 11 |
9 | Xtrfy K2-RGB White Edition | 11 |
10 | SteelSeries Apex M500 | 10 |
11 | Razer BlackWidow Chroma TE V2 | 9 |
12 | SteelSeries 6Gv2 | 8 |
13 | SteelSeries Apex Pro TKL | 8 |
14 | Corsair K-70 RGB | 7 |
15 | Fnatic Gear Streak | 6 |
16 | HyperX Alloy FPS RGB | 6 |
17 | SteelSeries APEX M750 TKL | 6 |
18 | SteelSeries Apex Pro | 6 |
19 | Zowie Celeritas II | 6 |
20 | Cooler Master Storm Rapid-i | 5 |
Apex Pro TKLの順位は高くはないですが、同じ OmniPointメカニカルスイッチを採用しているApex Proの使用人数を足すと6位(14人)となります。
このランキングを基にCSGOの海外プロの平均的なアクチエーションポイントを算出したいと思います。
1-1.CSGO海外プロ使用キーボードの平均的なアクチエーションポイント
順位 | キーボード名 | 人数 | キースイッチ | AP(mm) |
1 | HyperX Alloy FPS | 50 | Cherry MX Red | 2 |
2 | Xtrfy K2-RGB | 27 | Kailh 赤軸 RGB | 2.2 |
3 | HyperX Alloy FPS Pro | 19 | Cherry MX Red | 2 |
4 | Logitech G Pro Mechanical Keyboard | 15 | Romer-Gタクタイル | 1.5 |
5 | Razer BlackWidow X Chroma ME | 15 | RAZER イエロースイッチ | 1.2 |
6 | Logitech G513 | 12 | GX REDリニア スイッチ | 1.9 |
7 | HyperX Alloy Elite | 11 | Cherry MX Red | 2 |
8 | Logitech G Pro X Mechanical Keyboard | 11 | GX REDリニア スイッチ | 1.9 |
9 | Xtrfy K2-RGB White Edition | 11 | Kailh 赤軸 RGB | 2.2 |
10 | SteelSeries Apex M500 | 10 | Cherry MX Red | 1.9 |
11 | Razer BlackWidow Chroma TE V2 | 9 | RAZER イエロースイッチ | 1.2 |
12 | SteelSeries 6Gv2 | 8 | CherryTM Red switches | 2 |
13 | SteelSeries Apex Pro TKL | 8 | OmniPointメカニカルスイッチ | 0.4 |
14 | Corsair K-70 RGB | 7 | Cherry MX Red | 2 |
15 | Fnatic Gear Streak | 6 | Cherry MX Red | 2 |
16 | HyperX Alloy FPS RGB | 6 | Kailh Silver Speed | 1.1 |
17 | SteelSeries APEX M750 TKL | 6 | QX2 | 2 |
18 | SteelSeries Apex Pro | 6 | OmniPointメカニカルスイッチ | 0.4 |
19 | Zowie Celeritas II | 6 | ZF Electronics Red | 2 |
20 | Cooler Master Storm Rapid-i | 5 | Cherry MX Red | 2 |
平均 | 1.695 |
CSGOの海外プロ使用キーボードの平均的なアクチエーションポイントは=約1.7mmとなりました。
もちろん「選手が使用するデバイス≠選手が使いたいキーボード」、ですが
CSGOの競技シーンにおいて、アクチュエーションポイントの浅さはそこまで重要視されていないことがわかると思います。
あくまでゲームを快適にプレイする分には「0.4㎜のアクチュエーションポイントは過剰」であり、コスパが悪いと判断した理由の一つとなります。
イルミネーション機能が微妙
コスパが悪いと判断した理由の二つ目はイルミネーション機能があまりよくないから、です。
APEX PRO TKLのイルミネーションの変更は統合管理ソフトの「SteelSeriesEngine3」より行えます。

標準で用意されているプリセットは11種と比較的多い部類ですが、
なんか割とどれもダサいんです・・・w
プリセット①「ゴーストチェイス」
→赤、ピンク、青、黄色 が横へ流れていくようなイルミネーションですが、
何故か黄色だけ極太ですw


プリセット②「エレクトリックオレンジ」
→赤とオレンジが交互にイルミネーションされるだけ

プリセット③「かすみ」
5秒ほど紫一色 → そこから急にピンク、水色、青 → また紫一色5秒
(このプリセットのコンセプトがよくわからないですw)


プリセット④「プリズム」
→オーソドックスな各色横に流れるプリセット

イルミネーションの綺麗さ、設定のバリエーションの多さでいえばCorsair製のゲーミングキーボードのほうが優秀と感じてしまいました。
OLED (ディスプレイ)機能はあくまでおまけ
APEX PRO TKLには任意のGIF画像を表示されることのできるOLEDディスプレイが搭載されています。

このOLEDディスプレイにうまく機能性を持たせることができればよかったのですが、私には方法やいい案が思いつかず、結局デフォルトのSteelSeriesのロゴ表示から変更していません。
案として、Discordの通知を表示させるような機能をOLEDディスプレイに持たせることができないか、など考えましたが、結局キーボードのこの部分に視線をやるシーンは少なく、また方法もありませんでした。
例えばこのディスプレイがタッチパッド機能がついていて、よく使うショートカットなどを登録でき、タッチすることでショートカットを起動できる、といったような機能があればまだ活用シーンがあったのかなと思います。
またこの個所に本来配置されるはずの「PrintScreen」「ScrollLock」「Pause」の3キーが廃止されています。
「PrintScreen」キーはゲーム中のスクリーンショットを撮影するのに必要なキーなため、廃止されると困る面もあるかと思います。
よくスクリーンショットを撮影するかたは、SteelEngine3でキー設定を変更してもいいかもしれません。
打鍵音
同じリニアタイプのキーと比較すると、打鍵音は少し甲高い音でやや耳につく感じがします。
打鍵音をダイナミックマイクで収録してみました。
まとめ
コスパが悪いと判断したポイントをまとめたいと思います。
- FPSの競技シーンにおいて、アクチュエーションポイントはさほど重要ではない
- イルミネーション機能が他社と比較して残念
- OLED機能に目立った有用性がない
- 88キーという微妙なキー数
- 1万円台で十分優秀なゲーミングキーボードが多数存在する
個人的には最後の1万円台で十分優秀なゲーミングキーボードが多数存在するはかなり重要だと思っています。
2万5千円という高価なキーボードのわりに得られる恩恵が少ないと感じているためです。
そのため、APEX PRO TKLのデザインが好きだけど、購入を迷っている方には、
同じデザインで、廉価版のモデルがSteelSeriesより発売されているため、そちらの購入をお勧めします。
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